強制執行は深刻な状況
強制執行とは
債務の支払いが滞った状態が一定期間経過してしまうと、債権者が裁判所で手続きを取って債務者の財産を差し押さえざるをえなくなります。財産というのは現金や預金、不動産、宝飾品、自動車など価値のあるものを指します。これらを差し押さえて換価したのち債権者への支払いに充当されるのが強制執行です。
また、債務者が財産を持っていないとしても給与所得者であれば給与を差し押さえられます。こうなってしまうと、自分の給与が減るだけでなく会社にも多額の借金を抱えてしまっていることがバレてしまうことになります。
強制執行されることによる影響
強制執行による差し押さえが起こると、家や家具などすべてのものが差し押さえられてしまうようなイメージを持つかもしれません。そのイメージはドラマや映画の演出によって作られたものであり、生活に必要最低限のものは残すことができます。
不動産の差し押さえ
不動産を所有している場合は不動産を差し押さえられます。しかし、最初は仮差し押さえと呼ばれるもので、いきなり不動産が売却されるわけではありません。不動産の売却は債権回収が困難と判断された場合は手続きが始まります。売却が決定するまではこれまでどおり生活することが可能です。
また、家具も何もかも差し押さえられるのかというとそうでもありません。よほど高価な家具でないかぎりは差し押さえても二束三文にしかなりませんので、家具などはこれまでどおり使うことができます。不動産の差し押さえは自己判断で不動産を売却・取り壊しができなくするものです。
現金の差し押さえ
現金に関しては66万円以下の現金は差し押さえられない事になっていますので安心して良いでしょう。66万円もの現金を自宅に保管していることは一般家庭でも珍しいのではないでしょうか。しかし、問題は給料の差し押さえです。給料は手っ取り早く差し押さえられる財産です。
給料が差し押さえられると最大で25%までとなっているのですべて無くなるということはありません。債務者にも生活がありますので、すべてを差し押さえてしまうと路頭に迷うことになってしまいます。ただし、給料が33万円以上の場合は手取りから33万円を引いた金額と、手取りの25%を比較して高いほうが差し押さえられます。
預金口座の差し押さえ
預金口座は現金や給料と異なり一定額以下は対象外ということがなく、すべてが差し押さえ対象となります。そのため、差し押さえのタイミングで給料を預金口座に入れてしまっているとすべて差し押さえ対象となってしまいます。
ブラックリスト
債務の返済が滞ってしまい、強制執行にまで行ってしまうと信用情報機関に名前が登録されます。いわゆるブラックリストに載るという状態ですが、こうなってしまうと今後5年~10年間はローンを組んだり、クレジットカードを作ったりするといった信用取引が一切できなくなります。「この人はお金を貸しても返さない人です」というレッテルを貼られてしまうので誰も貸そうとはしないわけです。
債務整理と強制執行の関係
任意整理で強制執行は停止可能か
任意整理での強制執行の停止は現実的に不可能と考えておいた方がよいでしょう。任意整理は債権者と債務者の和解交渉であり、個人再生のように裁判所が間に入ることがありません。そのため、散々支払いの延滞をしたにもかかわらず、和解交渉を持ちかけてきても債権者は乗ってこないのが普通です。任意整理をするのであれば、強制執行が入る前に行っておくべきでしょう。
個人再生で強制執行は停止可能か
個人再生であれば、強制執行を止めることは可能です。個人再生は債務を5分の1まで減額して残りを3年で返済していくという手続きですが、個人再生は強制執行よりも効果が高いため強制執行後に個人再生を申請することで強制執行を止めることが可能です。
実は個人再生申し立てをしただけではダメ
ただし、個人再生の申請がそのまま強制執行につながるわけではありません。強制執行を止めるのであれば「強制執行中止命令の申し立て」をする必要があります。すこしでも早く強制執行を止めたいのであれば、個人再生に必要な資料や書類を作成して個人再生の申し立てにこぎつける必要があるでしょう。
特定調停で強制執行は停止可能か
特定調停は債務者と債権者の間に裁判所が入り和解を目指すものです。特定調停には弁護士や司法書士が間に入ることがありません。そのため、債務者本人が返済計画に納得して合意する必要があります。なかには無理な返済計画であるにもかかわらず、返済を滞納した負い目から合意してしまうというケースもあります。特定調停の場合も個人再生申し立てと同じように執行停止の申し立てを別に行う必要があります。
自己破産で強制執行は停止可能か
自己破産をするとすべての債務を免責する代わりに持っている財産は残らず処分されます。そのため、強制執行を止めることができますが、債務権に基づく強制執行の場合のみです。担保権に基づく強制執行は止めることができません。
強制執行の停止に関わる基礎知識
強制執行の種類
ここで強制執行の種類について確認しておきましょう。強制執行には「債務権に基づく強制執行」「担保権に基づく強制執行」の2種類があります。これらの違いは強制執行に至るまでの手続きが異なるためです。
「債務名義」に基づく強制執行
債務者側の返済が滞り、裁判所で両者が和解したにもかかわらず、債務者が返済を行わない場合に実行されます。判決で債務名義を受けた債権者が申し立てをすると裁判所が強制的に財産の差し押さえをするものです。
「担保権」に基づく強制執行
もともと債務の抵当権などの担保権を設定されている財産に対して実行されます。「債務名義」と異なるのは裁判所から判決を受ける必要がなく、登記簿謄本に担保権が登記されていれば申し立てすることができます。
「中止」と「停止」の意味
強制執行には「中止または停止」と「失効」があります。強制執行の「中止・停止」というのは強制執行の差し押さえがそれ以上行われなくなることを意味します。つまり、これまでに差し押さえられた財産については差し押さえが有効な状態です。
一度給料が差し押さえられてしまうと、たとえ強制執行が中止になっても効力がなくなるわけではないので給料の全額が手元に入ってくることはありません。ただし、すべて没収されるわけではなく、本来差し押さえられる予定だったお金は供託されるか、会社管理でプールされることになります。
「失効」の意味
「失効」はその意味のとおり強制執行の効力が失効することを意味します。財産および給料の差し押さえは止まりますので、給料は全額手元に入ることになります。失効するそれまで差し押さえられていた給料も戻ってきます。
強制執行の取り消し申請はすぐにする
たとえば個人再生の申し立てをした場合、再生計画案が認可されるまでは半年以上かかるとされています。個人再生が成立するまで強制執行が止められないのは生活を維持するのも厳しいでしょう。そのため、個人再生の申請をした場合はすぐに「強制執行中止命令の申し立て」を行うようにしましょう。
督促状が来たらすぐに弁護士に相談するのが吉
強制執行というのは借金をしている中でも1番深刻な状況です。債務の返済が滞っているだけでなく、督促が来てもなお返済が行われない場合、債権者はやむなく法的手続きを取ります。強制執行されてしまうとまず真っ先に給料は差し押さえられますし、借金で首が回らない状態であることを会社そのものに知られてしまいます。
会社は強制執行されたからといって社員を解雇するということはありませんが、同僚にまで知れ渡ってしまえば気まずい雰囲気から自分から退職するということにもなりかねません。まず、支払督促が来た時点で自分の置かれている状況を把握することが大切です。
支払うことができない=自力ではもうどうしようもないということですから、すみやかに弁護士や司法書士に相談して債務整理の手続きに入ってください。それをしないでいると2週間程度で強制執行されてしまいます。債務整理に入れば強制執行されることはありません。すぐに行動しましょう。
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