どうしても踏み出せない？債務整理は恥ずかしいという大きな誤解

債務整理とは？

借金に困った人のための債務整理

人生というのはいつ、どこに落とし穴があるのかわからないものです。日々まじめに、一生懸命に生きていても、ちょっとした間違いから予想とはかけ離れた方向に曲がっていってしまうのはよくある事。そんな象徴の一つに借金があります。堅実に生活していたはずなのに気づけば借金が増えていた、という事はそこまで珍しい事ではありません。

人間というのは、誰しもがそういった状況に追い込まれてしまう可能性を秘めているのです。実際に借金を背負う事になってしまい、苦しい思いをしている人々の為に債務整理という制度があります。借金返済に苦しむ人の為の制度でありながら、悪いイメージも多く聞かれる債務整理。

実際に借金で苦しみながらも、そういった悪いイメージが先行してしまった結果として中々利用に踏み切れない、恥ずかしいという方も多くいます。債務整理はデメリットも多いですが、あくまで困っている人を救うための制度です。本日は債務整理の正しい知識と、まことしやかに語られる誤解などを解説していきます。債務整理が恥ずかしいものではない事を理解していただき、一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

債務整理の種類について

債務整理とは、弁護士に相談しながら債権者や裁判所などとやり取りを行う事で、借金を減額するための手続きの事です。債務整理の目的は借金の負担を軽くするということであり、手続きを行う人の収入や返済能力といった財政状況に合わせる形で複数の種類があります。

そんな債務整理は、「任意整理」と「個人再生」、そして「自己破産」の3種類に大きく分類することができるのです。この３つの制度は、目的こそ借金の負担を軽くする為と一致していますが、その仕組みや範囲などは大きく異なります。ここからは一つ一つを詳しく解説してきます。

任意整理

任意整理とは、現在支払っている借金についてそれぞれ個別に計算をし直し、返済額の減額をするための制度です。この計算をし直す際にポイントとなるのが利息制限法と出資法です。本来、利息制限法で定められている上限をオーバーした金利で支払を行わせることは法的に無効とされています。

しかし、以前の出資法において、刑事罰に抵触しないとされる金利の上限というのはこの利息制限法の上限よりもはるかに高いのです。利息制限法と出資法、それぞれの利息の上限が異なっていることで、借金の金利には法的に無効であるが刑事罰を受けない、という非常にグレーゾーンなエリアが存在しています。任意整理というのは、このグレーゾーンなエリアの金利をきれいにするための手続きなのです。

借金返済の最初の段階にまでさかのぼり、利息制限法の金利の上限に収まるよう設定し直したうえで改めて計算を行います。支払い始めの段階からの金利が変化する為、総支払額も大きく引き下げられるうえ、既に発生しているグレーゾーンなエリアの金利分も元本の返済に充てたとして計算されるため、返済額の大幅な減額を期待できます。

場合によってはグレーゾーンなエリアの金利分を元本の返済に充てた事により完済してしまい、逆に余剰分が返ってくることさえあり得ます。これがCMなどでもよく見かける過払い金なのです。任意整理とはあくまでこれからも返済を続けるための制度なので、自己破産などのより重い債務整理の手続きに比べてデメリットやペナルティが軽いことが一番のメリットと言えます。

信用情報機関のブラックリストには登録されてしまうため、５年程度は新たに借金の借り入れを行うことなどが出来なくなってしまいますが、資産を没収されてしまったり、特定の職業への就労が制限されてしまったりすることも無く、安定した生活を続けることができるのです。

また、任意整理は裁判所を通さずに行える手段の為に他と比べて手間を減らすことができる。その名のとおり任意で行うことができる為、特定の負債だけを選んで手続きすることができるなどのメリットもあります。

個人再生

個人再生は、任意整理と違い裁判所を通じて行う債務整理です。2001年に開始された比較的新しい債務整理の手段で、任意整理と自己破産の間をとるような制度。任意整理よりも大幅な返済額の減額を狙うことができます。個人再生の流れは、弁護士などと今後3年間で返済する金額を相談し、裁判所に認めてもらった上で、実際に3年間、計画通りに返済をすることができれば残りの借金が免除されるという物です。

減額される金額は個人事業主か給与所得者かといった立場で変化するうえ、安定して返済を続けられるだけの収入があるかどうかなどの条件を認められなければそもそも利用できないなど誰でも取れる手段ではありませんが、最大で返済金額を10分の1まで減額することも可能です。

個人再生で最も注目されているメリットが、マイホームを没収されずに済むという事です。個人再生の制度が出来るまでは自己破産に頼る事しかできず、資産であるマイホームを手放さざるを得なかったような人たちも、現在であればマイホームや自家用車といった大きな資産を残したうえで、借金額を減額することができるのです。

負債を完全に無くすことは出来ない制度であり、あくまで返済を続ける人のための手段ですが、任意整理よりも大きく返済額を減らすことができる為、より重いペナルティや裁判所を通すためにかかる手間や時間といったデメリットを考慮しても選択肢には入れておきたい手段です。

自己破産

自己破産とは、裁判所を通して自分の持つ借金の返済義務の全てを免除してもらう制度の事です。任意整理や個人再生と違い、借金の返済そのものを無くしてしまう、極めて効果の高い債務整理の手段です。

自己破産を行うには、弁護士や司法書士と相談をしつつ、裁判所に破産の申し立てと免責許可の申し立てを行い、それを認めてもらう必要があります。ポイントは本人が本当に支払いをすることが出来ないのかという点です。支払い能力は負債の額や収入などから判断され、支払い不能と判定された場合に自己破産を行うことができます。

先程もお話しした通り全ての借金の返済義務を免除してもらうという強力な手段ではありますが、その分デメリットも非常に重く、信用情報機関のブラックリストに登録されてクレジットカードの利用や新たな借金が不可能になる期間は任意整理や個人再生よりも長期に及び、車やマイホームといった資産も自分の名義で購入していた場合は没収されてしまいます。

他にも弁護士や司法書士、税理士といった士業や警備員など、信用を重要視される職業には一定期間就くことができなくなってしまいます。効果が高い分、デメリットも非常に大きな為、基本的には最後の手段として考えておくことをおすすめします。

債務整理は周りに気づかれる？

債務整理を恥ずかしいと思ってしまう大きな理由の一つに周りの目という物があります。もし家族や会社に知られてしまったら、と考えてしまうと尻込みしてしまうところがありますが、債務整理が周りに知られてしまう事はほぼありません。債務整理を行ったからといって何かの通知が来ることはない為です。

例外として、自己破産に関しては官報に名前と住所が掲載されてしまうというデメリットはありますが、ほとんどの人は官報に目を通すことがない為こちらのリスクも低いといえます。ただし、官報に掲載されてしばらくは闇金業者からのDMなどが多く送られてくる傾向にある為、家族などに気付かれる危険性はあります。

唯一、注意しておきたいのはブラックリストでしょうか。債務整理を行うと長期間借金の借り入れが出来なくなってしまうため、住宅ローンなどを利用できないことで家族に気付かれてしまう可能性はあります。

債務整理について知られている間違った情報

債務整理はマイナスなイメージが強い為、怪しい噂が語られることは多くあります。中でも有名なのが「選挙権を失う」「パスポートを取得できない」といった話です。しかしこれはどちらも間違いであり、投票を行う事も、海外旅行に行くことも全く制限はありません。当然、それらの事で気づかれる心配もない為、過度に恐れる必要はないのです。