債務整理中に再和解は可能?
消費者金融をはじめとする貸金業者を利用している人の数は、現在で1,400万人を超えているそうです。国内の人口がおよそ1億2,000万人ですから、国民の1割以上の人が借金を抱えている計算になります。将来的に無理なく返済できる額の借金であれば、なんら問題ありませんが、必ずしもそうはいきません。
初めてお金を借りるときは、ある程度の抵抗を感じるものですが、二回目以降は一度目とは比べ物にならないくらい躊躇なく借りられるようになってしまいます。そうやって、気軽に借金したり、借金するのが習慣化したりしてしまうことがあるのです。もちろん、返済能力を超えて借りてしまうことだけが理由ではありません。
転職やリストラがきっかけで、借金した当時と比べて給料が少なくなることもあるでしょうし、事故・病気で思うように仕事ができなくなることもあります。理由は何であれ、借金の返済ができなくなった場合の法的な手続きのひとつが債務整理です。
債務整理、とりわけ任意整理の手続きをすると、支払いの期限を延期したり、将来の利息や遅延損害金を免除したりしてもらうことができます。任意整理は、裁判所を介さず、債務者と貸金業者がそれぞれ交渉を行うため、気軽にできるという利点があります。ところが、任意整理においては、借金の元本が減ることは決してありません。
ですから、とくに借金の額が大きい場合、仮に任意整理の手続きによって返済に関して合意に至っていても、必ずしもその合意内容に基づいて借金の完済ができるわけではないのです。任意整理後に、約束通りの返済額が支払えなくなり、滞納せざるをえなくなってしまった場合、ふたたびクレジットカード会社や貸金業者と話し合って、債務整理を行うこと、つまり再和解することは可能なのでしょうか?
和解せずに滞納してしまったら?
任意整理中に滞納してしまうとどうなる?
それについて答えを出す前に、まず任意整理の手続きをしている最中に滞納するとどうなるかについて説明しておきます。任意整理の手続きにおいて和解した際、ほとんどのケースでは期限の利益喪失条項が定められているはずです。つまり、借金の支払いを滞納してしまった時点で、期限の利益を債務者は失ってしまいます。
仮に、毎月の支払いを2ヶ月滞納したときに期限の利益を失うという決まりになっていれば、2度続けて支払いを怠ると期限の利益がなくなります。それによって、分割払いについての合意が破棄されることになるので、クレジットカード会社や貸金業者は、残りの借金をすべて一括で支払うように求めてくるのが普通です。
遅延損害金などについても決まりごとがある場合は、期限の利益を失ったあとは、残債に遅延損害金が加算されてしまうため、返済はますます困難なものとなってしまうのです。
支払いが困難となったら任意整理の再和解も可能
そうならないためにも、策を講じる必要があります。つまり、新たに債務整理の手続きを試みるわけです。その場合、返済に関して新しい条件のもとでの和解を模索するか、任意整理とは別の債務整理、すなわち、個人再生ないしは自己破産を検討することになります。任意整理の手続きは、一度しかできないという決まりはありません。
つまり、債務整理中に再和解は可能か、という問いに理屈の上で答えを出すとしたら、YESということになります。一度任意整理の手続きをしたにもかかわらず、返済が思うようにできなかった場合、再び債務整理を行うことが可能なのです。
とはいえ、約束を守れなかったわけですから(一度目の債務整理で合意に至った内容が、仮に利息制限法に違反するものであったとしても)、クレジットカード会社や貸金業者の信頼を損ねていることになります。
つまり、理屈の上では可能であるものの、ふたたび任意整理によって再和解に至ることは決して簡単なことではありません。一度目の任意整理がうまくいかなかった場合、自己破産や個人再生の手続きをすることも視野に入れておかなくてはならないでしょう。
債務整理中の再和解への道
一度目の任意整理で相手は精一杯
債務整理のなかでも、任意整理は債権者とクレジットカード会社や貸金業者との間の自由契約として位置付けられます。だからこそ、両者の間で合意がありさえすれば、理屈の上では何度でも任意整理の手続きを行うことが可能です。ところが、かつてとは異なり、現在ではほとんどの貸金業者が法律の定めるところにしたがって利息を設定しています。
つまり、法律上は、利息や遅延損害金を受け取ることができて当たり前なのです。そのような状況にありながら、話し合いを重ね、きちんと約束通りに返済することを引き換えに、利息や遅延損害金を免除してもらうようお願いするというのが任意整理です。
約束を守る・破るという以前に、クレジットカード会社や貸金業者は、一度目の債務整理においてかなり譲歩しており、すでにギリギリ妥協できる線で和解していることは強く認識しておきたいところです。一度目の任意整理において、債務者の収入状況などに合わせて、無理がないような和解案が提示されているはずです。やはり、任意整理で合意した内容通りに返済を行いたいものです。
なお、過去に別件で任意整理の手続きを指定するケースもあると思います。その場合は、合意に従って借金を完済していればまったく問題ありません。過去に任意整理をすると、一定期間、任意整理ができないという決まりもありません。
二度目の任意整理の注意点
やむをえず二度目の任意整理の手続きを行おうとする場合は、次のことに注意する必要があります。任意整理では、万が一返済が滞った場合に、借金を一括で返済したり、損害金が生まれたりすることなど、いくつか取り決めが交わされているはずです。
二度目の任意整理を申し出ると、決まりごとに基づいて請求がなされるのが普通ですから、取り決めの内容を今一度確認するようにしてください。その上で重要なのは、借金を滞納してしまう前に、相手に対して新たな任意整理を申し出ることです。滞納する前と、滞納した後では、相手の対応も大きく変わってくるはずです。
返済が難しいことがわかった時点で、すぐに二度目の任意整理の準備を進め、滞納前に手続きを始められるように備えておくことが大切です。また、一度目の債務整理では代理人を立てなかったという場合はとくに、専門家に依頼するのがよいでしょう。
再和解を申し出るということは、一度目の約束を守らなったということ。債務者による直接交渉では信用されず、再和解に応じてもらえない恐れがあります。客観的な立場にある専門家の力を借りることで、現実的に交渉を進めることができるというメリットもあります。
任意整理中の再和解が成立しない場合は他の債務整理を
個人再生
任意整理中の再和解が成立しない場合、他の債務整理を検討しなくてはなりません。まず考えられるのは個人再生です。再生計画を提出し、これが認められると、債務が5分の1に減額されます。元本が減額された借金を、原則3年かけて返済します。任意整理と異なり、元本がかなり小さくなり、利息もないため、毎月の支払額が大幅に減少し、無理なく返済することが可能です。資産を差し押さえられることもありません。
自己破産
もう一つの手段が自己破産です。すべての債務が免除される手続きです(ただし税金の滞納などは除く)。破産申立書を裁判所に提出し、返済ができないと判断されれば、一部を除くすべての借金を返済する必要がなくなります。
ただし、20万円以上の資産はすべて手放さなくてはなりません。個人再生・自己破産の手続きを行うと、以後7年は同様の手続きを行うことができなくなります。また、二度目以降は、審査も厳しくなりますので、安易に行うのは避けたいところです。